■春になったら苺を摘みに (新潮文庫)
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春になったら苺を摘みに (新潮文庫) 新潮社 >>当商品の最安値チェック 当商品の発売日: 2006-02 |
カスタマーレビュー:
購入者の平均評価:
| アスペルガーのジョン 評価: |
| 「西の魔女が死んだ」と一緒に買って読みました。 この本は、ウェスト夫人を核にした著者を取り巻く人々(あるいは、つかの間すれ違った人達)を描写した、いわば文章によるポートレートです。その交遊から呼び起こされるそれぞれの人となり、それに対する著者の考えは、硬質でありながらよどみない文体によって淡々と、しかし強い思いをもって語られていきます。 エッセイとひとくくりにしてしまってはあまりにも軽すぎる、この人の観察眼の確かさ、思考の緻密さに驚嘆しました。 個人的に特に興味をひいたのは、ボーダーレス(病名ではなく、彼の行動による)のエイドリアン、アスペルガー症候群のジョンといった、世間からやや距離をおかれてしまう人々についての記述です。おそらく著者も似たような気質を持ち合わせてのでしょう。知らないものを「理解はできないが受け入れる」ウエスト夫人の姿勢とはちがい、著者は彼らに対して、深いところでつながる共感のような気持ちを抱きながら相対しているようです。 (うがった見方をすれば、著者は他人よりもややその気質が強いために非常な努力を重ねて自分に不足する能力を補い、ここまでの観察眼を身につけ、社会に溶け込んだのではないか、とさえ思えます。あくまでも想像ですが) そして著者の共感という深いフィルターを潜り抜けて昇華された彼らの内面性は、著者の描く小説の人物それぞれの人格に鮮やかに肉付けをされてよみがえってくるかのような印象を与えます。どの登場人物が誰の気質を受け継いでいるのか、想像してみるのも楽しいかもしれません。 |
| おとなのためのお伽噺 評価: |
| 児童文学というのは童心を忘れない人が書くものだとばかり思っていたが、 人間の弱さや頑なな心や業をひっくるめた人間そのもの、そして生き物全般に たいする深いまなざしと慈愛があってこそ生まれるものなのだと思った。 梨木さんの著書で小学館文学賞の受賞作でもある「西の魔女が死んだ」を読んだとき、 クウォーターの女の子が英国人の祖母の元で暮らす、その暮らしぶりに土着のものを感じ、 これは体験を通じてしか成しえない表現ではないだろうかと感嘆の思いだったが、 その意味がわかった。 エッセイと呼ぶにはあまりにも多くの物語と土地土地の匂い、人々とのふれあいに 満ち満ちたおとなのための真実のお伽噺。 |
| 温かなエッセイ・そのバックグラウンドには「地球」がある☆ 評価: |
| なるべく相手の考えや境遇を理解しようと思って生きてきた。けれど、本文中の 「分かり合えない、っていうのは案外大事なことかもしれないねえ」という言葉に、ショウゲキ☆ この言葉も、著者である梨木さんがペンを執ると、なんてさりげない温かさを感じるものになるのだろう、と感じた。 他にも、エッセイ風のこの作品には、たくさんの人物が登場。ウエスト夫人を筆頭に、個性的かつK・・(←著者?)が接する人々は著者の類い稀なる洞察力によって、イキイキと描かれている。いろんな人を描いているのではなく、いろんな人種・その習慣を描いている。 「理解はできないが受け容れる。ということを観念上だけのものにしない、ということ。」 さりげなく温かく綴られたこの本には、地球を思う時間を与えられているような気がした。 のんびりと読んでほしい。描写を想像しながら☆ 温かなエッセイだけれど、そのバックグラウンドには「地球」がある。 |
| 眼差しが深いです。 評価: |
| 感動しました。梨木さんの下宿先の女主人、ウェスト夫人の稀に見る人となり、ウェストロードというコミュニティのおおらかな温かさ。登場人物一人ひとりが、まるで表紙の春を待つ愛らしい葉っぱたちのように、重なりながら寄り添いながら生きています。共存とは異質なもの、理解を超えるものまでも受け入れ、包み込むこと!しかも聖人君主然としてではなく、生身の人間の温かさで。そして行動する、敢然と。惚れ惚れするような潔さとユーモア。そして随所に散りばめられた思索と洞察の深さが、世界を混沌から救い出してくれるような気にさえなりました。「自分の信念に絶えず冷静に疑問を突きつけること…相反するベクトルを…一人の人間の中に内在させることは可能なのだろうか…」という一片の思索に考えさせられました。もしそれが可能であるならば、人類の未来は明るいものになるのでしょう。もし可能でなければ…信念に基づく争いがさらに生まれ続けるしかないのでしょうか。はたして私たちの精神は、もっともっと逞しく、「相反するベクトル」を内包するに耐えうるだけの、そしてさらに調和させうるだけの成長を遂げることができるのでしょうか。 |
| 人を信じるという希望 評価: |
| ウェスト夫人をはじめとする、登場人物の描写が緻密で分厚い。 わずかな会話から、その人となりを克明に把握できる背景には、技術はもちろん、梨木さんの人間への深い愛情があるように思います。 この慈愛を基礎とした明晰な思考と強い意志が、読んでいる間、心地よい風のようにずっと吹いています。 ナイジェリア人と猫のエピソードのように、楽しく微笑ましい話しもたくさんありますが、人種問題・共存という重いメインテーマが全編を貫いています。 そしてその複雑で巨大な重力に引っ張られながらも、落ち込むことなく滑空し続ける文章は、カバー表紙のように清涼で美しい。 梨木さんにとっての「言葉」というとても大切なものが、この本にはぎっしり詰まっている。 |
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